文久三年【冬之伍】

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    分かっている 私が此処へ真っ直ぐ通されたのは 私の虚実を見定める為だ 此処には現代中条家家督を継いだ者がいて 徳川十本刀は私を含め十一人いる 「貴様何者だ」 私を見もしないで吐き捨てたのは田村車前草の家紋を持つ田村家 「………」 私は目的以外に余計な事を話す気はさらさら無かった 真っ直ぐ私は歩きだす 「本庄!!待て!!」 土方さんが咄嗟に左腕を掴む 「離して、下さい…」 「馬鹿かてめえは正気か!!目の前に居るのが誰か分かってんのか!!」 感覚の鈍い左腕が土方さんの握力でギシリと軋む音がした 「知ってますよ……知ってるに決まってる!!この餓鬼の所為で私は利き腕を失ったんだ!!この餓鬼の所為で透はあんなにも傷付いたんだ!!私と透をこの世界に閉じ込めたのが……この、この餓鬼だ!!」 感情が納まらない 駄目だ、止まれ こんな処で暴れても何の解決にもならない 分かれ 理解しろ 駄目だ、止めろ パァン 乾いた音と頭が冴え渡る痛み 「本庄…割り切れ、お前は利巧な女だ、大丈夫だお前なら許せ無くとも進める……お前は此処へ何の為に俺を連れてきた?お前はお前の覚悟と忠義を俺に見せる為に連れてきてくれたんだろ?」 そうだ…落ち着け この餓鬼を殺す為に来たんじゃない 私は新撰組への恩義がある それを示す為に来たんだ
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