文久三年【春之壱】

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    「沖田総司、其処を退け…私は君らの敵じゃない」 「それって何かの冗談だったりします?」 「冗談は言うけど嘘は言わない」 「じゃぁ冗談として聞き流しますね!」 ニコニコ笑う沖田総司は人懐っこい親しみやすい人間の様だ…普通に出会っていたなら。 「ふざけるな!!こんな時に冗談なんて言ってられるか!!」 「貴方もふざけないで背中の物、出したらどうですか?私、そんなに弱くないですよ?」 「断る、これを君には向けられない」 「何故ですか?このままだと木刀ごと体真っ二つですよ?」 沖田総司の切っ先が僅か右に傾いた。 「君らが私を切れても、私には君らを傷付けていい理由は無い」 天然理心流… 「意味が分かりません」 5メートル以上離れていたはずなのに目の前で刀を振り上げる沖田総司。 早い!? 木刀では刀身は受けられない。 退けば斬られる。 突っ込むしかない。 バキン!! 弾けるような音と共に両腕が痺れる。 重い… ギリギリまで沖田総司の懐に近付き刀の鍔より下の柄を受け止めた。 「聞け!!私は敵じゃない!!今はまだ言えないが京に害為す者じゃない!!」 必死に叫んでも人が変わった様に無表情の沖田総司には伝わらない。 このままじゃ圧し負ける…
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