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「一つ目、京を大切にしろお前が上洛すれば日本は変わる、会津松平はお前を信じている目を掛けてやれ
二つ目、水戸を落とせ早くしなければ後々いらぬ戦の火種になる、あれらも又日本を変えようと必死だ道を完全に別つ前に今ならまだ間に合う、話をしろ
三つ目、私を欧米の人間に逢わせろ
四つ目、絶対にお前の意志を貫け迷うな止まるな
この条件が呑めないなら私は此処を去り、当代中条家の在るべき場所に戻る」
「一つ目、二つ目は分かったし四つ目も必ず守る…たが三つ目はどういう事だ?」
慶福は少し難しい顔をしている
「今お前が知る必要は無い」
「…ならば…いつか知るのか」
「知る、お前が私を求めたなら尚更思い知る」
「分かった…全て受け入れる」
「最後に一つ…これだけは異を唱える事を許さない…帰る方法を教えろ」
その瞬間、厚みのある刃が喉元に据えられた
「中条の恥曝しめ」
「お初お目もじつかまつります雪資殿」
中条雪資…幕末の中条家家督
据えられたのは現代のもう一振りの菊一文字八千流
徳川十本刀だ
「貴様此処まで来て四方や背を向ける気か」
「私にも守る者がいます、私は逃げません…此処まで来て今からもう私には戻れる体などない…ならばせめて守る者だけでも帰したい」
「体がない?」
雪資は私よりも少し年上に見えた
それよりも驚いたのは私が唯一家族と撮った最初で最後の写真に遺る父さんにとても似ていた
似ていただけで父さんを知らない私は何の感慨も湧かなかった、この男は父さんじゃない
「慶福よく聞け、私がさっき思い知ると言った理由だ、私は後二年しか生きられない、私がお前に力を貸してやれるのは後二年だ心しておけ、徳川家茂お前が中条家の末裔を看取るんだ」
室内は静まり返った
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