文久三年【冬之伍】

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    「後二年?…何故?」 慶福は今にも泣きそうだ 「生まれつき心臓を患っている、利き腕はこの時代で生きる代償として失った…だがお前にそんな事を気に掛けて貰いたい訳じゃない、私を此処に閉じ込めた以上は責任を以て私を使いきれ、私は逃げも隠れもしない」 「ごめ…なさっ……私は、私は何て、事を……ごめん、なさい…ごめんなさい」 慶福は両手で顔を覆い背中を丸めた 「もういい、お前が泣こうが喚こうが謝ろうが何の解決にもならない、止めろ…言っとくが私の弟子とお前が同じ歳でも私はお前に温情を掛けてやる気は無いからな、そのつもりでいろ…一度その玉座に掛けたなら覚悟は出来ているはずだ、何度も言うが甘ったれるな」 「……わか、った」 雰囲気は流星に似ていた、大人しく理知的でとても賢そうな子供だ きっと、とても優しい子なのだろう だからこそ、背負い過ぎ、早世してしまったのかもしれない 心の病は時として命を蝕む 公武合体 慶福…徳川家茂が掲げた政策 何としても私が生きている内に成し遂げ、目の前で自らの過ちや人の命の重みを分かり涙を流せるこの少年に未来を見せてやりたい この少年の優しさが日本を変える 自分が造り上げた日本でどれだけの民が笑っているのか知ってほしい いつか来る刀の無い平成の為に徳川家茂は間違いなく必要な人間だから その為に、攘夷は止めなくてはならない こんな鎖され、外を知らないなど、井の中の蛙同然だ尊王も確かに大事だ でも、公家と武家が共にあり、世界を知る事でこの国はもっと一つになれるはずだ 勤王佐幕 私が新撰組にこの身を委ねた最大の理由image=335621971.jpg
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