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「両手、挙げ…」
関西弁で苦無を私の首に宛てる。
やられた…逃げられない。
「名前…」
「本庄 祿」
「何者や?」
「……新……越後の者だ」
「何しに来たん?」
「分からない…気付いたら此処にいて……お願いだからまだ殺さないでくれ」
「お前次第や、動けば殺す」
「木刀と真剣以外何も持ってない…全て荷物は置いて行くから、行かせてくれ」
「あかん、直に沖田さんが来よる」
彼の直には本当に直にだった。
馬の蹄独特の音を軽快に鳴らして彼ともう一人男が現れた。
大分小柄で見たとこ透と同じか年下に見える。
「先程はどうも本庄さん」
「こちらこそ沖田さん」
「これが総司から木刀だけで逃げ切った女?」
「はい、油断すると痛い目に遭いますよ永倉さん」
もう一人の男は永倉新八…新道無念流免許皆伝。
逃げるのは諦めたが余計な動きは一瞬で首と胴体を離す要因だ。
だが、行かなきゃいけない。
「お願いします…刀も木刀も何もかも置いていくから透を追わせて下さい」
正面に立つ二人は私を見つめている。
「早く行かなきゃあの子は一人なんです…お願いします」
両手を挙げたまま頭を限界まで下げる。
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