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話し合いもまとまり各自私室へ戻ろうとした時だった
「少し待ってくれ」
珍しく大きな声を出したのは徳川家茂
全員が不思議そうにもう一度座ると徳川家茂は立ち上がり中条資春の眼の前に正座した
「中条、私はお前に謝らなければならない事がある」
「…なんだ」
「…すまぬ!!私はお前達を戻してやる方法を知らんのだ」
ピリッと部屋の空気が張り詰めた
無言のまま中条資春は立ち上がると部屋を後にし残された空気は悲しみでも無ければ怒りでも無い“無”だった
中条資春は静かに雪の舞い落ちる夜を歩いた
少しずつ少しずつ速度を上げて
口から溢れる嗚咽は白く濁り
焼け付く胸は痛みを求める
かじかむ指先を握り締めても
何も手に入らなかった
「ごめん…透」
雪夜越え
願いし君の名
雪月花
遠く縁に添えるは
凍花か
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