文久三年【春之壱】

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    「駄目だな」 「いいですよ」 二人は同時に喋った。 「総司!?」 「沖田さん!?」 指し物後ろの彼も驚いた様で苦無が首を掠めた。 「いいですよ、刀と木刀、羽織を預かり私達が同行すると言う条件なら」 「何でもいい、私だって流石に馬を撒ける程早くない」 言うが早いか刀と木刀と着ていたスーツの上着を投げて走り出す。 荷物が無くて軽い。 橋を渡ると直ぐ後ろに馬が三頭続く。 関西弁の彼は一体何処に馬を隠していたんだ? それからひたすら田舎道を走り続けたすれ違う人は明らかに遠撒いている。 道はついに一歩道の行き止まりになり突き当たりに古びた社が見えた。 「待ってください」 沖田総司の声に私は止まる。 「私が見てきます、永倉さんは本庄さんをお願いします」 「分かった」 「待って!!透は木刀を持ってるが沖田さんに適う程の力は無いから刀を向けないでくれ!!」 「時と場合によりますね」 笑顔で彼は言い残し社の戸に手を掛けた。 ガラッ!! 開けた瞬間飛び出して来たのは透だった。 木刀を振りかざし沖田総司に向かう。 「うわぁぁぁぁ!!」 「止めろ透!!!!」 沖田総司はすれ違うかの様に静かに透の横を擦り抜けた。
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