文久三年【冬之七】

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    俺は、勘違いしていた。 本庄は将軍に仕える事で新撰組を裏切らないと言う忠誠を俺に認めさせる為に江戸へ連れて来たと思っていた。 だが、真実は余りにも無情な命と存在を結び留める為だった。 本庄は最初から将軍への忠誠なんて考えちゃいなかったんだ。 本庄は将軍を使ってでも、総司を助けようとしてくれていた。 それが、一体どれだけの窮地に自分を貶めるかも知りながら… それでも、本庄は総司を助けようとしてくれていた。 きっと、本庄は取り返しのつかない事をしたに違いない。 もう、後戻りが出来ない所に一人立っているに違いない。 それ以前に、たった一人捨て身でこの城に来てしまったんだ… 俺は、一体何を信じようとしなかったんだ? 本庄の何を疑いたかったんだ? 分からない事が、それだけが怖くて本庄一人をこの城に入れてしまったのか? 現に、今まさに…俺は本庄の背に守られている。 何時だって、救われてきたのに…何故、その優しさや愛を無かった事にしたかったんだ? 絶対に忘れる事の出来ない事実だと言うのに。
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