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「…え?」
野口さんは怪訝な不思議そうな顔で私を見た。
「野口さんなんかの為じゃなくて、野口さんの為だからこそ本庄さんは自分の持ち得る大きな力を呼び起こして楯にしたんでしょうね…だって本庄さんて何処か無鉄砲な所がありません?目的の為なら手段とか選ばない様な…」
野口さんと話していて初めて会った夜の事や翌朝の事を思い出した。
「………」
「私ね、初めて会った時に本庄さんをとても怒らせてしまって、すごく嫌わました…私は刀を構えているのに本庄さんは刀を構えてはくれなくて…木刀で躱されちゃったんです…二回目に会った時には私と永倉さんが刀を持っているにも関わらず本庄さんは刀も木刀も私に放り投げました……どちらも早阪君の為に…本庄さんてそういう人なんですよ…」
「後悔…するはずなのに」
「しませんよ、本庄さんは絶対に野口さんを助けた事を何一つ後悔なんてしません」
私が笑って見せると野口さんは困った様に少し目を泳がせる。
私は一つ一つ確認する様に言葉を繋げた。
野口さんと私とじゃ本庄さんの映し方が違うのは当然で、だからこそ…私が見てきた本庄さんを私自身が再確認しながら野口さんに伝えなければならなかった。
「私から見た本庄さんて何時も全力で本気なんです…大切な人の為に」
「私の、知ってる本庄は…すごく、強がりで…泣くのが下手な女です……でも、誰より優しくて暖かい」
野口さんは躊躇いがちに恥ずかしそうに小さく語ってくれた。
「善かった…野口さんがそういう人で」
「はい?」
「野口さんがもし、ほんの少しでも本庄さんを不安に思ったら私、本庄さんが信じられなくなってしまいます…だって野口さんは本庄さんにとって特別ですから」
「え!?」
「私、貴方が大好きです」
「は!?」
野口さんは目を白黒させていたけど私は構わず立ち上がり上機嫌で井戸に向かい歩きだす。
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