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朝餉が終わると早阪君が真っ先に走ってやってきた。
「沖田さん!稽古付けてくれませんか?」
「いいですけど、何もそんなに息を切らさなくても」
早阪君はとても急いでいる様で勢いに負けて安請け合いしてしまった。
「打倒健司!!」
「はぁ?」
「呼び捨てにするなと言ってるだろうが!!」
早阪君が息巻いて拳を握ると後ろから現れた野口さんに小突かれる。
「うっせぇ健司!!絶対負けねぇ!!」
「お前なぁ!!」
「何かありました?」
二人はこんな言い合い等をする様な仲だっただろうか?
「「何もありません!!」」
何かあったらしい…
何時までも小競り合いが終わらず仕方なく引き摺る様に早阪君を連れて道場に向かうと場内の隊士達は私を見るなり明らかに一歩下がった。
「さぁ始めましょうか」
「お願いします!!」
私と早阪君が打ち合いを始めると自然と回りの隊士達は隅に寄りじっと見つめている。
彼等が隅に寄ったのは見学の為では無い
避難だ
ダァン!!!!
激しい音が場内に響き誰もが一瞬目を固く瞑るも、私一人だけ目を見開いていた。
裏霞崩しの構えから思いっきり早阪君の木刀を凪ぎ払い面を打ち込んだのに、彼は怯む事無く払われた木刀の柄を滑らせて受けとめたのだ。
普通なら、いくら早阪君程の体格でも優に二畳は吹き飛ぶ。
でも彼は受け止め私の目の前に立っている。
私は無意識の内に口角が上がっていくのを止められなかった。
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