元治元年【春之壱】

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    自分の死に恐怖しても涙は流れなかった。 鎮まる自分に驚きは感じていた。 しかし、それ以上に心地好く…有ろう事か私は眠ってしまった。 庭先に蹲る様に抱いたままじゃ流石に凍えるとまでは理解し本庄さんを抱き上げ元居た場所に座らせ、そのまま又抱き締めていたら…眠った。 やってしまった… 目が覚めた瞬間は微睡む意識の中の温もりに未だ溺れていた。 しかし、私は女を抱いた事が無い… 特に、必要性は感じられなかったし触れたいと思った事も無いし大した興味も無い。 間違っても男色家ではない。 だから、逆にその温もりに違和感を感じた。 何? 誰? バサッ!! ジャキ!! 「…!?」 寝呆けた頭は冷水を浴びた様に覚醒し、布団を跳ね飛ばすと、いつも置いてある刀掛けから清光を抜き取る。 切っ先を向けた先には… 座ったままの本庄さんが居た。 「あの…落ち着いて下さい」 喉元に据えられた切っ先は絹の様な肌の薄皮一枚にピタリと触れ、彼女の表情に恐怖は無いものの驚愕と寸でに止められた痛みに引きつっていた。 「…あ…え?…あ」 「…沖田、さん……刀を…」 「ひっ!?な、何故?ご、ごめっ…すみません!!」 刀を向けた私が悲鳴を上げた。 刀を納刀して座っている本庄さんに飛び付く。 「怪我!!怪我は!!」 「沖田さん!!…大丈夫です、怪我なんて無いから落ち着いて下さい」 あぁ、もう私は一体何を… 私は本庄さんを跨いで左腕で背中を支えると顎を少し持ち上げ喉を信じられない至近距離で見つめていた。
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