元治元年【春之壱】

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    全く以て自分が情けなくて堪らない… 覚めた頭で昨夜を思い出せば本庄さんが今朝、私の部屋に居た事は何の事も無い、ただ、どうやってあの状況から私を部屋まで運んだかは考えたくない。 でも、自分の精神が鎮まったまま生死を冷静に見定める事が出来た… 志は今も忘れちゃいない。 私はどんな状況だろうと… 死にたくない。 生きて生きて生き抜いて、 この組と未来を見る。 私のこの手はまだ何も失ってはない、迎えても無い離別に絶望するのも、終焉に諦めるのも止める。 私は――… 新撰組一番隊組長沖田総司 私の命はこの刀にのみ懸ける。 寒さを感じ拳を握る、其処にすら命は存在する。 死ぬには早過ぎる。 朝焼けにけぶる空を見上げても遠くは見えなかったけど、きっと明日もこんな朝を私は迎えるんだ…必ず。 立ち上がり夜着の土を払うと… 「師匠なんて大嫌いだ!!!!」 そりゃもう他の隊士達が寝呆け眼で部屋から飛び出す位の大声が邸内に響き渡る。 まさか…!? 又?と胸が冷え飛び出してきた隊士達を掻き分け声のした方に走る。 邸の一番奥の廊下の突き当たり、高欄に寄りかかり蹲る早阪君の腕の中に本庄さんは居た。 「ムカつく…マジでふざけんな、馬鹿じゃねぇの何考えてんだよ馬鹿、アホ、考え無し…」 「ごめん…」 思い付くだけの罵声を浴びせる早阪君に表情は見えないけど本庄さんは優しい声で謝っていた。 人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られちゃいますから、さっさと退散しますか… 踵を返し振り返り自然と笑みが零れたのは早阪君には内緒。
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