元治元年【春之壱】

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    私の高笑いも永倉さんの部屋の前で呆気なく終わり、私は縁側の一番隅に正座させられている。 「ちょっと、楽しいですか?」 「楽しい」 永倉さんにあの手の冗談が通じない事はたった今身を持って思い知った。 「永倉さ…」 「なんだ」 返事がとても早い。 と言うより被ってる。 「本庄さんがね…」 「…なんだよ」 私が言葉を切ると永倉さんは嫌そうに先を促す。 「私は後半年で新撰組から居なくなるって教えてくれたんです」 「……………え?」 「総司?」 私の突拍子も無い言葉に永倉さんの目が点になり、左之さんは冗談だとでも言って欲しい様に口元が半分笑っているけど、頬は引きつっている。 「私、結核なんです」 「……は?」 「おい、待てよ何言って…」 「私、死んじゃうんです」 ダンッ!! 「…五月蝿ぇぞ総司」 「落ち着け新八」 永倉さんは座っていた縁側の床に拳を叩きつけて私の着物を掴む。 左之さんは永倉さんの衿と腕を掴んで止めようとはするものの私を見つめたまま目が離せなくなっている。 「ちゃんと最後まで聞いて下さい…私、薄々気付いてました十九の時に麻疹に掛かってからずっと調子が悪かったんです……特に最近酷く疲れてました、本庄さんに昨夜はっきりと言われて分かってた筈なのに分かってたつもりで何も分かっちゃいなかった…ずっと逃げてました。でも、止めました、私、生きます…本庄さんが私を助けてくれたから」 「…総司、でも結核って」 「薬だって無いんじゃ?」 二人の目は哀れみとかそんな上っ面だけで済む様な物じゃなかった。
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