元治元年【春之壱】

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    薬…左之さんの言葉にふと疑問が頭を埋め尽くした。 本庄さんが昨夜持ってきた薬…一体何処から? 本庄さんは昨日まで何処に行ってた? 日本には薬が無く不治の病と呼ばれる結核 日本の外にならあるかもしれない結核の薬 「永倉さん…左之さん……どうしよう…………私、私…」 「どうした、総司!」 「薬…本庄…御公義、江戸…まさか」 私…何て人と出会ってしまったんだろう どうしたら善いんだろう 私は一体、何が返せるんだろう 「怖い、くらいに……嬉しくて……私、こんな事……許される筈が、どうしよう…」 昨夜、確かに死に対する恐怖はあったのに全く流れなかった涙が、今、自分の体の一部の筈なのに全く言う事を聞かずに溢れ零れる涙。 喉が詰まって、頭に浮かぶ全ての言葉を口にしたくて、それでも足りずに声を張り上げたくて堪らない衝動に駆られる。 「総司そりゃ…あいつの名前だよ」 「…そうだな…」 永倉さんは私の頭をガシガシ撫でながら口を開き左之さんは合点した様に笑みを溢した。 「本庄さんの名前?」 「あぁ、祿って字の意味知ってるか?」 「ぇ?…ぁ……あ、あぁ………うあぁああぁぁぁぁ……」 本庄 祿 祿…天から賜る幸い 言葉に出来ない位の大きな愛を貰っていたんだ…
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