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それからいくばくかは静かな日々が続き、今まで極端に医者を嫌っていた総司は本庄に連れられて散歩がてらに行くようになった。
少しずつ変わってきた気がする…
何がどうとかって事じゃねぇけど、ただ、あの琴線に触れるか触れないかを手探りで暗中模索するような訳の分からない不安は無くなった。
そんな、俺達には似合わない平穏に近藤さんは言い出した。
「たまには酒でも呑もう!」
相変わらず豪快に笑う近藤さんに俺と左之は思わず呆気に取られ、平助に至っては余りの大声に馬鹿口を開けている。
「明日の夜は島原だ!!」
「近藤さん、後ろに本庄いますけど」
俺達は構わないが一応と言っちゃぁ失礼だが本庄は女で、偶然通りかかった本庄は苦笑いで近藤さんを見ていた。
「ほ、本庄君!?あ、いや島原とは言っても他意がある訳じゃないんだ!!」
「近藤さん…」
島原に他意が無ければ本意は何だ?
土方さんは手に負えないかの様に俺達を睨む。
島原とは島原…花街、色街とまぁ呼ばれは色々あるが本来はやはりそれなのに、近藤さんは完璧にぶっ飛んだ。
「あの、私別に何も言ってませんけど…」
「おめえの顔が言ってんだよ」
俺が言うのも難だが土方さんは助け船ではなく火に油を注ぎ船を全焼させた様だ。
「土方さんは顔以外もそうですよね」
「あんだと?」
「又やられたいんですか?」
「黙れてめえ!!」
どうやら土方さんは自分で火を煽っておきながら自分から飛び込んだらしい…
「本庄君!!あの!!総司が!!…総司が、珍しく皆でお酒を呑みたいって言ったんだ……君と早阪君と呑みたいと……それで、この大所帯だろ?全員入れる座敷が島原の大店しか無かったんだ…勿論女性の君が嫌がるなら少し足を伸ばしてもう少し探してはみるよ…呼ぶのは芸妓だし、どうだろうか?」
近藤さんは慌てた様に弁解をしているが、元々本庄にはそんな事を気にしている様子は無かった。
「近藤さん、私の事はそんなに気にしないで下さい…島原、一度くらいは見てみたいですし」
本庄が苦笑いしていたのは、新撰組の局長が声を大にして島原を口にしていた事だったのだろう…
そこは近藤さんだから許してやってほしい………
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