元治元年【春之弐】

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    そして、次の夜…何時かの様にぞろぞろと島原へ向かう。 確か近藤さんは島原の大店と言っていた… 金の無い新撰組が取れる大店なんて限られてるが、俺の目は悪くなったのか? 「近藤さん、店、間違えてねぇよな?」 「ん?間違えてないぞ」 祇園だってあったはずなのに島原を選んだのが何故なのか、本庄の手前、格式で少し頑張ったのだろうと思ったけど……頑張り過ぎやしないか近藤さん 「養花楼…俺、初めて見た」 平助が出格子の門の更に奥をぼんやりと見つめる。 「俺だって初めてだ、つうか、死ぬまでに入る事なんて無いと思ってたしな…」 京、島原…養花楼 最古にして最高の格式を持つ廓 此処は茶屋の中でも敷居が比べ物にならない。 幕府公認の花街とは言うだけあって養花楼には上級武士がよく通う。 養花楼は古い名前で今は輪違屋と暖簾に銘打たれている。 「観覧謝絶だぜ?近藤さんいつの間に?」 「お偉いさんと会うからじゃねぇの?」 まるで来る者全てを見定めているかの様な廓一帯がほとんど外からは見えない造りで緊張する中、近藤さんに着いて歩きながら左之を見上げる。 「お偉いさんと随分楽しい会合してんだな…」 「近藤さんは、此処に来た事無いぞ」 「土方さん、何で今日に限って俺達の後ろに居るんだよ」 「俺の勝手だ」 確かに…だが、迷惑な…
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