元治元年【春之弐】

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    「マジかよ!?ってか何で師匠知ってんの?」 「百年以上先にもこの店あんのか!?」 早阪と平助は両側から本庄を覗き込んでいる。 平助、お前…童顔祟って十六の早阪と何にも違わねぇぞ… 「何でって言っても、小説とかで有名だし…茶屋だけど太夫や芸妓抱えてる大店で技巧は名門の流派だって聞くよ?確か桜木太夫がいるって…今は糸里って源氏名かな?」 本庄は少し考える素振りを見せて二人に話してる。 本庄の話に間違いはない。 茶屋で芸妓や太夫を抱えてるのは少し珍しかった。 置屋に居る太夫や天神、花魁を茶屋や揚屋に指名をして呼び出すのが普通だが、此処はお抱えの為呼び出す事はしなくていい。 その代わり、流儀を持つ老舗中の老舗が太夫を抱えてる分、花代は冗談では済まない額を取られる。 「桜木太夫?太夫ってアレじゃねぇの?京都のチョー高い割烹とかの店に呼ばれるエロい人」 ゴツッ!! 「いってぇ!!!!」 早阪が何かを言った。 何を言ったのか分からないけど本庄に殴られた。 京都はきっと京の事 チョーは確か凄いって意味だったような? エロいって何だ? 「お前はどうして言葉を選べないんだ!!」 「何だよ!!本当の事だろ!?」 「遊女と太夫を一緒にするな!」 「違うの!?」 あぁ…そういう事か エロいってのは如何わしいと言う意味の様だ。 確かに遊女と太夫は違うがそれは島原だけに限った事で身請けしない限り絶対に島原の太夫は体を売らない。 勿論如何わしいと言う意味の遊女は京にもいる辻君がそうだし大阪なら惣嫁、江戸は夜鷹、吉原遊廓の太夫は体を売るのが仕事だ。
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