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最初は皆師匠を見て目が点になっていた。
当然と言えば当然だ、師匠は髪こそ短いが顔は絶対美人だと俺は断言できる。
正直言えば沖田さんが師匠に見せたい物があると言うよりも酒を飲ませ始めた時点で俺は気に入らなかった。
下戸だと知っていながら飲ませる沖田さんに先日の朝がフラッシュバックして俺は近藤さんや土方さんに酌にも行かず師匠から離れられなかった。
師匠は酔うと誰彼かまわずに愛想を振りまき甘える…
はっきり言えば絶対に目を離せない、どこで誰に何されるか分かったもんじゃない。
案の定、沖田さんも師匠を部屋から連れ出そうとして俺は始めは断った。
「本庄さんちょっとお見せしたい物があるんですが、部屋を移動しませんか?」
「いいですよぉ」
「よくない、沖田さん師匠は大分酔ってて一人じゃ歩けないからどうしてもと言うなら、俺も行く」
しかし、予想に反したのは沖田さんが何の躊躇いも無く俺の同行を許可した事だ。
「えぇいいですよ!!さ、こちらです」
師匠を支えて沖田さんに付いて行くと五つ隣の部屋に入る。
部屋に入るとさすがに俺はたじろいでしまった。
まさか。花魁がいるなんて夢にも思わなかったから…それも三人も。
「ようおこしやす…あら、殿方おしやすか?」
「違いますよ、本庄さんは列記とした女性です!本庄さんどうですか?すごいでしょう?」
「すごい…綺麗」
八畳程ある部屋に着飾った花魁が三人いるだけでも十分すげぇのに室内を埋めつくさんばかりの色取り取りの着物が並べられている。
「じゃぁお願いしますね!!」
「へえ」
何が何だかわからないまま俺は沖田さんに引っ張られて部屋を閉め出された。
「ちょ…おい!!何だよあれ!!何すんだ!!」
「本当は早阪君の為でもあったのになぁ…君は私に対して警戒心が強いですからね」
「はぁ?意味わかんねぇ!!ってか師匠はどうしたんだよ!!」
「ふふふっきっと早阪君も喜んでくれると思います」
楽しそうに笑う沖田さんに無性に腹が立つ。
部屋の中では花魁達の楽しそうな笑い声と少し戸惑った師匠の声が聞こえる。
もし、師匠が悲鳴一つでも上げよう物なら俺は沖田さんをぶん殴って部屋に押し入るつもりだった。
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