元冶元年【春之参】

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    物思いに耽ってると沖田さんは着付け終わっていた。 「鴇鼠、菖蒲、甚三紅、猩々緋、本当に遊女みたいですね!!」 「お前笑っていう事かよ…」 「だってこんな派手な色ですよ?」 あまり聞きたくない様な会話を原田さんと沖田さんは笑顔でしている。 「全員そこに座って」 訳も分からず大人しく座ってみると師匠は後ろに回ると手早く全員の髪紐を解く。 「おい!!何してんだ!!」 「本庄!!」 「え?ちょっと!!」 「あらぁ…」 櫛を通して髪を梳き、花を選び、白粉を叩き、薄く紅を引いた。 「総司、お前本当にやれるぜ」 「はい!殺る方ですよね!!」 「そうだな」 原田さんの際どいを通り越した発言に永倉さんが珍しく助け船を出した。 「じゃぁ行こうか」 「師匠、何処に行くか聞いていい?」 「聞くの?」 「早阪…心が折れるから止めとけ」 永倉さんに肩を叩かれ、人間諦めが肝心だと悟った。 「……うん…止めとく」 そして、俺達は五つ隣の宴席と言う名の公開処刑場に向かった。 健司は既に死んでるらしい。
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