元冶元年【春之参】

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    「皆様お待たせ致しました…花遊びは如何ですか?」 師匠は廊下に座り頭を下げるとそう言って笑った。 「どうぞ…」 先頭に立っているのは残念な事に俺だ。 「…どうぞ」 やばっ師匠が苛立ち始めてる…酒が抜け始めたな 永倉さんに背中を押されて前に踏み出るが顔を上げる勇気は無い。 師匠の隣に座って俯いて居ると… 「っう……!?」 「顔を上げなさい」 右隣から師匠の冷たい右手が俺の顎をそっと持ち上げた。 柔らかい感触と体温の低さは胸を冷やすよりも火を灯した。 俺の酒はまだ抜けてない。 観念したように永倉さんに原田さん藤堂さん、沖田さん、健司が座敷に上がる。 座敷は大歓声が沸いて… 「永倉君いいね!!いいね!!」 「黙れ武田!!!!」 馬越さんを隣から離さず武田さんは永倉さんを大爆笑で指差した。 「藤堂さんも沖田さんも野口さんもすげぇ様になってるなぁ!!」 「おい!!てめえ等新八はともかくなんで俺の名前が無ぇんだ!!」 「左之!!てめえみてぇな大女がいたら俺達男は皆潰されちまうだろうか!!」 「左之てめえ今俺はともかくとか言いやがったな!?」 「じゃぁ私は!?」 「じゃぁ俺は!?」 「黙れ平助!!総司!!てめえ等が居るとややこしくなんだよ!!」 座敷のど真ん中で誰が醜いだのお前の方が醜女だのと騒いでいるが、所詮男を隠し切る事が出来ない。 取り敢えず、その野太い声と下品な言葉遣いを改めてから討論し直した方が良いと思うのは俺だけだろうか?
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