元治元年【春之肆】

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    目の前の隊士の話など上の空で酒を飲みながら考え事をしていたら段々眠くなっていた。 五月蝿い 眠い 考え事も面倒になり酒を飲んでいる内に体を支え切れず前のめりに倒れる。 遠くで賑やかな宴会が聞こえる。 ひどく気分がいい… だけど眠りに落ちる事が出来ない。 人が多すぎる。 透…どこ…? 体がうまく動かない。 又やってしまった… 以前に飲み過ぎるなと透や幸人達に散々口煩く言われた。 その時は何があったか知らないが、今までに見ないくらい剣幕だったので気圧されながらも頷いたが… ヤバい… 気分がいいのに胸騒ぎがする。 眠りたいのに…怖い 「本庄?…本庄?」 聞き慣れた透よりも落ち着いた低い声。 「本庄、こんな所で寝るな、前に言っただろう?」 前に? …野口だ。 眠いのとで何も答えずにいると体が浮いた。 抱えられたらしい。 何故か分からないけど、感じていた怖いと言う感情は消えていて…あっという間に眠りに落ちた。 暖かくて安心する。 この体温は知っている。 何も怖くない。 でも…何故だろう、少し淋しい。 眠い… 酒を飲んで眠るなんて久々だ。 前は確か…そう… 透がいた。 怒った様な泣きそうな顔で透が私を抱えていたんだっけ? 「……と…る」 眠いよ、透。
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