元治元年【春之陸】

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    女は開け放たれた部屋へ怖ず怖ずと入り上座に酌をし始めた。 先ほどまで騒がしかった座敷は無音と化し異様な雰囲気を此方にまで漂わせる。 ある程度時間が経つと座敷は又騒がしくなりだし、私は少し夜空を見上げて酒を飲む。 すると、 「来い!!!!!」 『はいぃぃ!!!』 それは馬鹿みたいにでかくてよく通る声で、向かいの棟の一つ上の階の私の部屋まで響いた。 呉野は余程驚いたのか肩を揺らして私と一緒に出窓を覗く。 座敷からあの女を筆頭にぞろぞろと隊士が続いて出てくる。 「な、何ですの?」 「………」 何なんだ? あの女の正体を知りたくなってきた。 女が引き連れて出て来たのは 一番隊組長沖田総司 二番隊組長永倉新八 八番隊組長藤堂平助 十番隊組長原田左之助 元新撰組局長芹沢鴨の部下野口健司 そして、あの大柄な少年 何故、新撰組とも在ろう男達があの女に従う? 少年以外は皆組織幹部… 「!!!っ………ぁ、はぁはぁ」 「河野はん!?」 今……………目が、合った 私は勢い余って片腕に抱いてた呉野ごと室内に身を投げた。 あの女……私に、気付いた。 監察か? 分からん……あの女が分からん
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