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半刻程すると女は又戻ってきたが後ろには花魁?遊女?が着いて………
コトン…
「河野はん、お猪口落ちましたえ?」
「……っくく…っふ」
「河野はん?」
花魁でもなければ遊女でもない。
先程、あの女の後ろを着いて歩いていた隊士達ではないか…
余りにも想像の範疇を大きく超えた隊士達の姿に私はつい持っていた酒を落とし腹を抱えた。
「河野はんどないしはったんどすか?どこか痛おしやすか?」
「違っ…呉、野…窓の外を見てみろ」
「へえ…?………え?、あれ?河野はん…あれ、お侍はんらと違いますの?…え?」
呉野は目を白黒させて私と隊士達を交互に見ている。
そして、隊士達が座敷に上がった瞬間、静まっていた座敷が大喝采に沸いた。
「ふふっほんま、おかし…」
呉野は涙を浮かべる程に笑っている。
きっと、こんな時世でない場所で出会っていたなら、私達は斬り合いをせずに済んだのでは無いだろうか?
こんな夜、無性に先生の死を忘れたくなる。
何故、先生は死ななければならなかったのか…
先生が生きていたなら…
馬鹿馬鹿しい
先生は死んだ
志し半ばに殺された。
新撰組は敵だ。
絵空言などいらない。
目の前の現実は変わらない。
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