元治元年【春之陸】

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    座敷は相変わらず賑やかなのに、一人…いや二人出てきた。 「野口健司」 その腕には、あの女が抱えられ中庭に向くように座ると酒を飲みはじめた。 見付かってはいけない為に障子の僅かな隙間から見ていると、どうやら女は眠っているらしい。 程なく、先程から女の傍を付かず離れずと従う少年がやってくると野口は女を少年に放って座敷に戻った。 野口健司の女ではない様だ… しかし、少年の女にしては違和感を感じる。 まるで絶対服従の様に遠目からでも分かる。 でも雑色と言う扱いではない。 少年が立ち上がると流石にあの違和感はやはり気のせいだったのかと思えた。 七つ隣の部屋へ二人は消えたからだ。 宴会は静まる気配など更々無く、原田左之助は女物の着物を脱ぎ捨て腹踊りを始めた。 あの男、さっきから何故あんなにも脱ぐんだ? 上座に視線を向けると丁度、沖田総司が土方歳三にしなだれかかっていた… あの二人は、そういう…関係なのか? 二人をどう見ても酒に酔ってる様子は無く土方歳三の席に徳利は一つも無い。 政治的見解は気にしてきたが人となりは知らない。 人一人とはこんなにも面白いものなのか…
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