平成十一年【春】

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    中学校から帰り鞄を下ろしてすぐに道着に着替えると待ち構えたかの様に響き渡る大声。 「ししょーーーー!!」 「むかえにきたよー!!」 「はーやーくー!!」 「祿さん、お迎えですよ」 階下からギャンギャン聞こえる声は私が一秒遅れるごとにボリュームが跳ね上がる。 「はぁ…今日は低学年か」 「ししょぉぉぉぉ!!!!」 「五月蝿いっ!!お前等どぉしていつもそんなに五月蝿いんだよ!?大人しく待ってられない訳?」 耳を指で塞ぎながら階段を降りると玄関には低学年組の子供達が道着ではしゃいでいた。 「むり!!」 「むりむり!!」 「ししょーむかえに来てもらったらありがとうって言うんだぞ!!」 「お前等……もういい、行くぞ」 なんか怒る気力も無くなった。 浜裏の道を歩いていると低学年組の生徒が家から飛び出しては列に連なる。 「ししょー!!」 「せんせー!!」 「コラ!!家の中で走るんじゃない和也!!」 「うげ…なんでバレたんだろ」 「お前の足音は五月蝿くて外まで響くんだよ、まったく」 六歳しか違わない彼らがこんなに小さいのはすごく不思議な気がした。 毎日毎日それなりに楽しかった。
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