元治元年【春之九】

12/13
前へ
/554ページ
次へ
    きっと中条には中条の考えがあるに違いない。 分かってる。 分かってる… たった一人の男の為に、恩返しの為だけに江戸城に斬り込んで来た女だ。 新撰組の沖田総司と言った筈だ。 どんな人間かも分からない。 姿形も人柄も知らない。 ただ、少しだけ気になった。 「だが、中条と言えどかなり難しいぞ…奴等が過激派攘夷志士なら尚更間髪入れずに組織一つ潰さねば何が返ってくるか分からん」 「…でしょうね、彼等とて馬鹿ではありませんから…ただ想いが幕府と正反対を向きながらも平和を願っている事に違いはありません」 正反対 何故、正反対を向いてしまったのか… 過ぎた事を問うても時間は戻らんが、想いは戻る。 ならば、同じ方向を向けば善いではないか。 どちらが、民の為、これからの国の為となるのかきちんと互いに理解すれば善いではないか。 何故、それが出来なかったのだろう…
/554ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5137人が本棚に入れています
本棚に追加