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「山南さん、いいんだ…武田君、そんなにあの老人が誰か知りたいかね?」
俯く土方さんの表情は暗い
「言えるのかい?」
「言わせたいんだろう?」
「……ふん」
武田さんは鼻を鳴らして腕を組んだ。
土方さん…
「土方さ…」
「あの老人は、渡来物が趣味の江戸の堅物呉服屋だ…私が、私が……その悪餓鬼だった頃に何度も説教を貰い頭が上がらない……まだ何か聞きたいのか?」
え…?
「は?」
「だから…まだ……何か、聞きたいのか?」
「土方君………武田君、もういいだろ、土方君だって…その、昔は色々あるんだ」
えぇぇぇ!?
え?
昔?
江戸の呉服屋?
私は知らないんだが…
「……土方君、君…はぁぁぁ」
武田さんはこの上無い呆れ顔で土方さんを見るとこの上無い溜め息を吐いて仏頂面のまま部屋を出た。
「歳…」
「近藤さん、あいつはどうも信用ならねぇ…山南さん済まねぇ」
近藤さんは土方さんを困った様な顔で見つめてから、適わねぇと小さく呟いた。
「私はいいんだよ」
「あんたがいなかったら、今のも思い付かなかった」
やっぱり、嘘か…
「総司」
「はい」
「徳川十本刀と次期将軍が来た」
「…………………はい?」
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