元治元年【春之拾】

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    私は早阪君の腕を掴んだまま坊城通を走り五条壬生川へ向かって無我夢中で走った。 山崎さんから聞いている。 本庄さんをこの通りでよく見掛けると…最初は何でかな?って思って山崎さんにお願いをした事がある、結果は失敗だったけど少しだけ分かった事がある。 京の社寺と言う社寺をひたすらに周り参拝しているのだと言う事。 ただ、無言で静かに手を合わせ祈っていたと山崎さんは教えてくれた。 だが、道中所々で忽然と姿を消すのだと言う。 そして、壬生川付近でよく見付けるそうだ。 だから壬生川を目指して走ってる。 「ちょっと!!お、沖田さん!!待って!!!」 「待てません!!!」 「はぁ!?」 五条壬生川に着くと私は速度を緩め早歩きに人並みを掻き分ける。 「沖田さん!!マジ待って!!!どこ向かってんの!?」 「本庄さんを探してるんですよ」 私は足を止めて早阪君と向き直らされる。 それくらい早阪君の私を引き止める腕の力は強かった。 「師匠?なんで?」 「…何ででしょう?」 そうやって聞かれたら分からなかった。 何故、本庄さんに会いたいのか… ただ、衝動的に彼女に会いたくなった。 それも、早阪君と一緒に。 「……ん~?いまいち沖田さんの言いたい事がよく分かんねぇんだけど…」 「…すみません」 「取り敢えず、師匠に会いたいんだろ?今日は西本願寺か興正寺か東本願寺って所に行けば会えるよ」 早阪君はよく分からないと言う顔をしながらも本庄さんの居場所を教えてくれた。 「え?早阪君、知ってたんですか?」
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