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正直、驚いた。
いや、違う…焦ったんだ。
まさか、透がいるなんて微塵も思っていなかったから。
夕暮れを過ぎ、宵の差した京の街を歩きながら私は自分の行動の浅薄さを苦虫と共に噛み締めた。
しかし、急がなくてはならない。
何としても見付け出さねばならない。
あの日を迎えさせる訳にはいかないのだ…
「…庄さん……本庄さん!」
「…ぁ、え?はい!」
私の頭の中は今日までに回った社寺や旅籠、遊廓を碁盤の街に当てはめている真っ最中で、腕を掴み顔を覗き込む沖田さんに返事しか返せない程驚いた。
「本庄さん、落ちますよ?」
「え?」
不思議そうに私を見る沖田さんは左手で指を差す。
「………っうわぁぁっ!?」
「師匠のばーか」
「落ちなくて良かったな本庄君」
後10センチで道沿いの川に落ちる所だった…
いきなり現れた川に私は素っ頓狂な声を出して大袈裟な程に飛び退く。
「び……びっくりしたぁ…」
「あははっ!本庄さんでもこんな事あるんですね!」
沖田さんはお腹を抱えて笑いだし、私は真っ赤になって八つ当たりと言わんばかりに透を睨み付けた。
「ボーッとしてっからだよ」
「透!!!!お前なぁ!!早く教えれ!!!」
「俺の所為じゃないじゃん!!俺だって後…センチしたら教えてたかもしんないだろ!!」
「おい!!!後何センチか言ってみろ!!!!つか、もっと早く教えれさ!」
何で三月間近の寒い夕暮れに汗掻いて怒鳴ってるんだ自分は…
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