元治元年【春之拾一】

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    「強く、なりたい…」 「本庄祿、お前さんはよく頑張った…否、一人で頑張り過ぎた」 砂利を踏むゆっくりとした足音は近藤さん、沖田さん、透に自然と道を開けさせた。 「誰かに……助けて欲しかった、でも…でも、誰も巻き込みたくなかった…傷付いて欲しくなかった」 「本庄祿、人とは万能では無い…でも万象を動かす力は持っている……それはお前さんの様な慈悲深き心だよ…本庄祿」 目の前まで来て止まった足音は「よっこらしょ」と言う声と共に漸く姿を現した 小柄で白髪の髪を結上げ、垂れ目に顎髭を蓄え白祿の着物を着た鈴木永嗣が… 「六、月……」 「皆まで言わずともよい…縁は繋がれ絆を生む、生まれた絆は必ず強さになる…本庄祿、お前さんが作った縁はどれだけある?それがお前さんの強さぞ」 「…縁」 頭に置かれた手は大きくて十年以上前に喪った手を思い出した。 大好きな大好きな手だった。 《いい子だ…よく頑張った》 この手はそう言っている様だった… 私の縁で得た手 徳川十本刀二砲雑賀孫市 正真正銘の孫市の手 日本一の狙撃手 「本庄祿…儂の腕をお前さんにくれてやる」
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