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この時代でよく其処まで調べあげた物だ
「…そうなんですか?」
私はニコリと笑って見せると山南さんは微かに目を細める。
「下緒は大名結びの蝋色塗りの黒漆鞘、打刀ではなく長刀、大太刀四尺五寸…今まで見た事が無い」
報告書を読み上げるかのようにスラスラとよく喋る男だ。
「それは珍しいんですか?」
表情を崩さず問い掛ければ彼は少し目を泳がせた。
「珍しい…普通二尺一寸から長くても二尺八寸程度、木刀ですら四尺三寸…あの長さで腰反りが高く先にいってやや先反りもつく…太刀なのに足緒が無い為太刀緒も付けられない…あの刀は一体何を斬る為の刀なのかな?それに大名結び…」
笑止、愚問
「私はあの刀を使った事が無いので分かりませんね、大名結びだか何だかもよく分かりません」
今度こそ山南さんの表情は消えた。
「使った事が無い?」
「はい、あの刀で何かを斬った事はありません」
「……そうかい」
山南さんは短く返事をすると帰っていった。
四尺五寸の大太刀?
下緒が大名結び?
足緒が無い為太刀緒が無い?
だからなんだ?
なんでこんなに勤勉に調べ上げて分からない?
それとも分かっていて口にしない?
それならやはり山南は利口な男だ
口は災いの元
容易に喋れば後悔の一途を辿るだろうね
暁…
「透、出ておいで…」
「俺が起きてたの知ってたのかよ…」
「当然だろう?透は気が利くから助かるよ」
「あの人、山南さん…師匠を疑ってんだろ?」
透はドカリと隣に座って胡坐を掻く。
「仕方ないさ…私達は余りにイレギュラーな存在で危険だからね」
「…分かってっけどさ」
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