文久三年【春之弐】

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    あれから四日が過ぎ… 「局長…山崎です只今戻りました」 山崎烝は本庄祿の名前で城内に入り生まれて初めて将軍と謁見した。 正直よくて家老と話が出来る位と高を括っていたが、まさか謁見を本当に許されるとは夢にも思わなかった。 「…先日の書簡は間違い無く事実だそうです…鉄扇も水戸徳川より越後中条家へ贈られ、この世に二つと無い物で刀は……鎌倉幕府時代に後鳥羽上皇より賜った菊一文字だそうです、中条家の官位は正四位の参議で昇殿を許されています」 「……後鳥羽?菊一文字?参議?昇殿?…何故それが御庭番なんだ…」 土方歳三は山崎烝の報告を復唱しても絡まった糸は解けなかった。 同じように近藤勇も腕を組み考えている中、山南敬助はじっと刀を見つめる。 「近藤さん!!!!土方さん!!!!本庄さんが!!本庄さんが目を覚ましました!!」 障子を思いっきり開けて沖田総司は叫んだ。 奇跡が、起きた… 直ぐに医者が呼ばれ診察をしたが部屋を出た医者は難色を崩さなかった。 部屋に入ると本庄祿は右目を包帯で巻かれ左目がうっすらと開き天井を見ていた。 「…聞こえるか?」 土方歳三の問い掛けにはいと擦れた小さな返事が返ってきた 。  「申し訳ございませんでした」 土方歳三は土下座をした。 「どんな処分も受ける、その前に一体どういう事か説明して欲しい」 頭を下げたままの土方歳三に返ってきたのはやはり擦れた小さな返事だった 。
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