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夕餉が終わり庭先でうとうとしてると表の方が騒がしくなってきた。
そうかと思ったら浪士達が部屋にぞろぞろと戻ってくる、その中に永倉さんを見付けて声をかけてみた。
「永倉さん、何かあったんですか?」
彼はあからさまに嫌な顔をして後ろの大柄な男と中肉中背と言った普通の男を振り返り毒づく。
「…筆頭局長のお帰りだよ」
「芹沢、鴨…」
「知ってるのか?」
永倉さんの視線が僅かに鋭くなる、余程嫌いで印象最悪らしい。
「昨日沖田さんから…名前だけ」
「目を付けられたくなきゃ此処で大人しくしてるんだな」
永倉さんなりに気を使ってくれたのか肩をポンと叩いて部屋に入った。
「あの、そんなに嫌われてるんですか?」
大柄な男に問うと
「まぁ強いには強いが、あの人の所為で俺達ぁ壬生狼なんて呼ばれる羽目になったからな」
「新八っつぁんは特に毛嫌いしてるよな…」
二人は原田佐之助と藤堂平助
種田宝蔵院流の槍の使い手と北辰一刀流の剣士だ。
「へぇ、触らぬ神に何とやらですかね…」
「確かにそれが利口だな」
「うん…それに本庄さん女だしね、近付かない方がいいよ」
二人共ため息を吐いて部屋に入るが彼等の心配も虚しく私は申し訳ない顔をした沖田さんに呼ばれて道場から来た透と近藤さんの部屋へ向かった。
「失礼します、沖田です…二人をお連れしました」
「…入りたまえ」
低い声に聞き覚えは無かった 。
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