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中に入ると大柄な男が上座に座り、その隣に見知らぬ二人の男、反対隣に近藤さんと土方さんが座っている。
「君が本庄祿かね?」
大柄な男が透を扇子で指す。
「俺じゃありません、此方が師である本庄祿で俺は早阪透です」
透は座ったまま拳二つ分下がり頭を下げた。
「お初お目もじつかまつります…本庄祿と申します」
私も透に倣い頭を下げた。
「ほぉ…君が?」
男は大層驚いたのか声がワントーン上がった。
確かに何の紹介もされずに名前しか知らなければ私と透を見て誰が私を師だと思うだろうか…
透は年齢の割に大人びた顔立ちで体格も私より遥かに良い。
「…して、その怪我は?」
近藤さんと土方さんは本当に名前しか男に告げていないらしい…
「長州藩士と少々ありまして…」
「負けて逃げて来たと?」
大柄な男の隣に座る痩せてる様だががっしりとした体格の男が鋭く睨み口角を上げた。
嫌な性格だ。
「逃げたと言うよりは捨てらた所を助けて頂きました」
この話自体が嘘の為、考えるのが面倒くさい。
「…ッフ」
小馬鹿にしたように鼻で笑った瞬間ピクリと透の指先が震えた。
「新見君…こんな細腕なのだ致し方無いではないか」
クククッと喉の奥で笑う声にとうとう透は顔を上げた。
「ん…なんだねその目は?」
「何でもございません、早阪元から目付きが悪いもので、失礼致しました」
透が口を開く前に私は頭を下げた。
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