文久三年【春之参】

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    「…まぁいい、私は壬生浪士組筆頭局長芹沢鴨、隣は副長の新見錦、助勤の平山五郎だ」 苦し紛れの言い訳を受け流して手下を紹介した芹沢が妙に気になった。 「…はい、不束な田舎者には有りますがどうぞ宜しく御願いします」 更に頭を下げると芹沢はやはり笑っている。 何を考えている? 「三日後の晩に皆で島原へ行こう…どうだね近藤君」 いくら会津藩御預かりとは言え皆で島原? そんな大金は無かったと聞くが… 「はぁ…しかし芹沢先生…」 近藤さんは明らかに困り言葉を濁したが 「我々が持ちますよ他に何かありますかな?」 上から近藤さんを黙らせると三日後は決定したらしい。 土方さんは一切口を開く事なく目を閉じていたが深い呼吸をして精神安定を図っているようだった。 「それでは、これにて失礼させて頂きます」 一礼して立ち上がった時だった。 「本庄君、君は女子かね?」 芹沢を振り返ると目を眇めていた 一番重要な事すら話してないのか… 「いかにも…」 立ち止まり答えると平山五郎が立ち上がる。 「貴様女だったのか!!」 「平山君いいではないか…この浪士組で女子の身で在りながら肩を張る其の意気や善…これからが楽しみだ」 この男、私を知っていて喋っていたのか… この時私はてっきり目の敵にされて刀を取り上げられ女中にされるかもしれないと予想していたが、事態は信じられない最悪の展開を三日後の晩に迎えた。
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