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私は上座の一番左端山南さんに酌をし透が中央に座る芹沢に酌をしている時だった。
新見が酔って透の隣に座り芹沢に正面から何かを熱く語ろうと身を乗り出した、その時ーーー
ガダン!!
パシャ!!
少し大きな音がして皆の視線が芹沢と新見と透に集中する。
芸者は少し慌てて何やら部屋の外と忙しなく言葉を交わしている。
しかし、次の瞬間私は徳利を投げて走りだしていた。
抜かせるか!!!
右腕しか動かない私は力の限りに透を引き倒して透と向き合う様に芹沢と透の間に体を滑り込ませ右足で膝を着き体を支え左足を伸ばして右手に力を入れて顔の横に構える。
ガチャン!!!!
バシン!!!!
「うわぁっ!!??」
「…ッ!?」
ドスン!!
たった一瞬の出来事に部屋は静まり返る。
私の伸ばした左足は新見の抜刀しようとした刀の柄を押さえ付けそのまま後ろに蹴り倒し、顔の横に構えた右手は芹沢が懐から払われた鉄扇を受け止めていた。
透は私の目の前で目を丸くしていたが私の首が僅かに下がるのを認めると我に帰り私を抱え込む様に抱き締めると後退る。
私は透に抱き締められ冷静を取り戻すと居住まいを正し正座で芹沢と向き直った。
透は気付いたのだ…
私の首が僅かに下がった瞬間に私がキレた事に、そして怯えて私を鎮め様と抱き締めた。
実際新見が抜刀の兆しを見せた時本気であのまま首をへし折って殺そうかと思った。
透を斬ろうとした
新見錦…
「我が門弟が誠に非礼を…師である私からお詫びを申し上げます」
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