5136人が本棚に入れています
本棚に追加
沖田さんは番傘を拾って私に握らせた
「お元気ですか?」
沖田さんは暗かった
「本庄さん?」
でも、何ヵ月振りに人と会話をした
「どうしたんですか?本庄さん、泣かないで下さい」
自分の寂しさを透の心配で紛らわせていた
「本庄さん、戻ってきて下さい…皆が心配しています」
沖田さんはまだ動かない私の左手を握る
「一言でいいんです、帰りたいと言って下さい…私達が何とかしてみせますから」
感覚の鈍い左手が暖かい
「本庄さん、早阪君が待ってます…毎日門の前で貴女が帰ってくるのを待ってるんです」
透…
「近藤さんや山南さんもあの土方さんだって本庄さんを心配しています…酷い事されてませんか?怪我は大丈夫ですか?」
帰…りた、い
「沖田…さん」
「なんですか?」
「透は、元気ですか?」
「えぇ…朝から晩まで木刀を離しませんよ、初めて来た時より食も太いし永倉さんと仲良しになったみたいです」
良かった、此れで前に進める
「そうですか、透をよろしくお願いします…では」
「本庄さん!!帰りましょう!!」
沖田さんは左手を掴んで離さない
「沖田さん、私にはやらなければならない事が有ります…私一人の些細な力ですが、新撰組の為に私を仲間と言って下さった人達の為にやらなければならない事が有ります
今、私が皆さんの所へ逃げ帰れば士道不覚悟で切腹しなければなりません
ですから、私が戻るまでの間、どうか透をよろしくお願いします」
やんわりと沖田さんの手を解き歩きだす
覚悟は決まった
私が芹沢一派を討つ
最初のコメントを投稿しよう!