文久三年【初夏】

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    「我々は今芹沢がいて水戸の名と京都守護職御預の名でそれが変わる近藤一派など討てん!!」 酔っていて話の端々が端折っていて解りづらいが野口は現状満足しているから壊すなと言っている様だ 「なれば、お止めになればよろしいではありませんか」 目を眇めて野口を胡乱に見る 「あやつ、私を斬る気だ!!…私は助勤だ!!…斬るんだ……」 野口は突然向かい合った私の右手を握り締めて泣き声にも似た声を出したかと思ったらバタリと膝に倒れこんだ 「…野口殿?……野口殿!!起きて下さいませ!!お部屋へお戻り下さい!!」 野口はガッチリと私の唯一動く右手を握り締め全く剥がれない それどころか私の膝の上で寝ている… 「……勘弁してくれ…」 全く身動きが出来なくなった 何なんだこの男… だが一番冷静に見定めているらしい、確かに左腕が動く若しくは動かない状態に完全に慣れれば芹沢程度の新道無念流など怖くは無い 流石に永倉さんに勝負を挑む程の命知らずではないが 歴史が変わっている…? 何にせよ芹沢と新見は斬る 「ってか朝までこのままかよ…」 ため息すら重い 翌朝、うとうとしてる中野口の盛大な悲鳴で目が覚めたのは言うまでも無い
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