文久三年【初夏】

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    「…何故、野口殿がそんな事を申されるのですか」 信じられない野口の真意 「私はこの場所を気に入っている!!だがな、貴様が来て変わった…此処は帰る場所のある人間が居ていい場所ではない!!新見に着いて行ってみろ…貴様は二度と帰れぬぞ」 「…分かりました」 野口は私を前川邸へ戻そうとしていたのだ だが明晩新見の共に付けば二度と前川邸へは戻れなくなるから此処にいろと…心配した 歴史とは人一人でこんなにも変わる物だなんて 私がこれからやろうとする事は人の理を犯す禁忌ではないのだろうか? 目の前で震える野口を絶対に死なせてはいけなくなった 明晩、野口の言っていた通りに新見は私の部屋へ来た 「本庄!!本庄!!」 「…はい…何でしょうか?」 「貴様何故寝ている!!」 「申し訳ございません、風邪を引いてしまい」 「何だと!?起きれぬのか!!」 「目眩がしてどうにも体が言う事を訊きませぬ」 「…ッチ、じゃぁいい!!」 芹沢を一回り小さくした様な男、新見錦はバシン!!と荒々しく戸を締めて出ていった 私に一体何の用事だったなのだろうか? 時間は確か六時位だった、一刻程して庭に気配を感じた 私は何の迷いも無く戸を開けると山崎さんが立っていた 「一応や、今日突然赤沢が動きよった…なんや島原の角屋言う店に入った」 「角、屋?……今日か!!だから新見は!!!!」 全ての線がやっと繋がった、野口が来た時点で気付くべきだった 新見は私に赤沢守人を殺させ様としていた
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