文久三年【初夏】

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    私は山崎さんが何かを言ってるのも聞かずに走りだした 途中で芹沢派の隊士ともすれ違い怒鳴られた 走って走って八木邸を飛び出しすぐ近くの前川邸に飛び込み庭を駆け抜ける 山崎さんは後ろから制止を叫んで追い掛けて来る 突然走り込んで来た私に門番は呆気に取られていたが大声で追い掛けて来る 更に門番の大声を聞き付け待機していた隊士達が総出で追い掛けて来る 完全に不法侵入者と思われている やべ……ちょっと怖くて後ろ見たくないかも 私は盛大な怒声を浴びながら土方さんの部屋を目指す 明かりが付いた部屋が見えた瞬間月明かりに影が差し私は堀川を抜いた ガシャァァン!!!! 高い金属音と凄まじい殺気が庭を満たし 三振りの刀と一本の槍が交わる 「本庄さん!?」 「本庄!?」 「お前何で!?」 屋根が降りてきた沖田さん永倉さん原田さんの声に私を追っていた隊士達がどよめき立つ 「どいて下さい!!時間が無いんです!!」 私は刀を弾き上げて永倉さんと原田さんの間をすり抜ける 「何事だ!!」 「どうした!!」 かなりの騒ぎで流石に土方さんは部屋から出てきて後ろには近藤さんもいた 「土方副長火急でございます!!刀をお返し下さい!!!!」 私は土方さんの前まで来て片膝を着いて頭を下げた 「本庄!?お前どうして此処に!?」 「本庄君無事なのかね!?何があった!?」 「時間がございません!!急がなければ隊士が一人落命致します!!」 私は顔を上げて叫ぶと二人は色を無くした 「どういう事だ!!」 「説明している時間がございません!!失礼致します!!」 私は土方さんの質問を無視して部屋へ駆け上がる 床の間の布袋に入った菊一文字八千流を抜き取り土方さんの腕を躱してそのまま庭の塀を飛び越える 「追え!!本庄を見失うな!!」 背後、塀の向こうで土方さんの怒鳴り声と監察方数人が後ろを順に着いてくる
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