~第二章・すれ違う想い~

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友人も初めて聞いた話の様 で、押し黙っていた。 僕には君の崩れかけた心が 手にとるようにわかった。 傷ついた人は、捨てられた 子犬の様にすべてに牙をむ いて人を信用しない。そし て哀しくも傷を隠し、駆け 引きをしながら人を欺き、 本当の自分を隠しながら大 人になっていく。 だからいつだって僕は相手 に信用してもらう為に、自 分の傷を、自分の心をさら け出し、噛み付かれても引 き下がらずに笑顔で手を差 し延べてきた。 だけど君は、ためらう事な くいきなり自分からさらけ 出してきた。 僕らを信用したワケじゃな い。すがり、助けてもらい たかったワケじゃない。た だ僕らを試したんだ。 きっと君はありきたりな言 葉ばかりを並べて、一歩ひ く様な人とばかり接してき たんだね。泣く事も噛み付 く事も止め、その崩れかけ た心のすべてを駆け引きの 道具にして、本当の愛をさ がしていたんだね。
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