~第一章・葛藤…そして出逢い~

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 現に不満はなかった。過 去に付き合った女性達も、 親友と呼び合う様に自然と 僕の周りにいた。その時つ き合っている人との相談な んかに乗っていたんだ。そ れが心地良かった。信用さ れている安心感があった。  駅前で路上ライヴをして いても悩みを抱えた人達が 話しかけてくれた。 当時、ストリートミュージ シャンは絶頂期にあり、歌 声が雑ざる程であったが、 人気なのはメジャーなアー ティストのコピーユニット ばかり、下手くそなオリジ ナルしか演らない僕の周り は賑わう事はなかった。 何より、明るい詩が歌えな かったんだ…。 それもそのはず。僕は幸せ を感じた事がなかった。か けがえのない友人達から愛 情を受けても、恋人や家族 の様に愛された事がなかっ た。僕だけがいつも孤独だ った。 それを憂う詩ではなく、そ んな人達に 『君は一人じゃない』 と手を差し延べる詩を唄っ ていた為、わずかに同じ闇 を抱える人達が聴いてくれ ていた。  僕は無になっていた。喜 びも哀しみも感じないまま 人の為だけに生きる。それ がすべてだった。 それだけが僕の生きる意味 だったんだ…。
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