夏の模試

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夏の模試

その後の一週間も無事に過ごせた。特に勉強に躓くこともなく、案外スムーズに進み、予定していた範囲まで余裕で終わった。 模試の前日は、夜の十時まで勉強した。あまり遅くまで勉強して、睡眠時間が取れないと、能率が悪いらしい。 美咲、あんまり寝てないんだろうな。顔も窶れたし、クマも出来てる。俺のために自分の睡眠時間削ってまで… 美咲のためにも明日の模試では、結果を出さないと… 次の日。 俺は遅刻しないように、余裕を持って学校に行った。俺が受けるのは数学と国語と英語。由美ちゃんも三教科受けるらしく、同じ教室にいた。 「裕哉くんおはよう!さすが、来るの早いね」 由美ちゃんが話しかけてくれた。見慣れないポニーテールをしている。 「おはよう、今日の俺は一味違うからね」 由美ちゃんはフフっと笑った。 しばらくすると担当の先生が来て、由美ちゃんとバイバイした。 模試でこんなに緊張するのは初めてだ。模試なんて毎回ぬりえ感覚でマークシート塗って、即寝てたもんな。 でも今日はそうはいかない。入試本番のつもりで解かなきゃならない。 「………では、始めっ!」 開始の合図が響けば、皆一斉にプリントを表に向けた。 隣の教室で美咲も頑張っているんだ。俺も負けていられない。 俺は鉛筆を握ると、一旦大きく深呼吸をした。そして目を瞑り、瞼の裏に美咲を描いた。 よし、大丈夫。
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