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携帯をいじっていたら、すぐに一時間が経っていた。
教室のドアが勢いよく開くと、次々と生徒が出てきた。
「この模試受ける奴って、国立目指してる奴だよな。見た目からして頭よさそう」
「何か言った?」
ひょこっと美咲が現れた。俺はいきなりのことで慌てて、携帯を落とした。
「お待たせ、てか帰っててもよかったのに」
「だって模試頑張ったから褒めてほしくてー」
歩き出す美咲の一歩後ろを歩いた。ベタベタ触ると、相変わらず嫌な顔をされた。
「どうだったの?模試」
俺は美咲の隣を歩き、歩幅を合わせた。
「まだわかんないけど、実力は発揮したつもり」
それだけ告げると、美咲は安心したように笑った。そう、とため息をついた。いつもとは違う、落ち着きのため息だった。
「美咲は?相変わらずバッチリだろ。一年の時からずっと西大学A判定だもんな」
にこっとして美咲を見ると、いつものような自信に満ちた表情はなかった。
「んー…何か、あんまり手応えがなかった、かな」
美咲は困った顔をして、首を傾げた。
「大丈夫だって!美咲は学年でも毎回トップだろ?」
自信満々に言った。それは本心だった。だって俺の彼女、美咲は完璧な女だと思っていたから。
俺の身勝手な自信が、美咲のプレッシャーになっているとも知らずに。
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