壊れた世界、壊された心

12/23
前へ
/422ページ
次へ
「止めて、ナイト……」 「どうして?そうしなきゃ、このシェルターの人間は皆殺しにされるのに」 少しも揺るがないナイトの言葉。顔は合わせず、淡々としながら発している。 「ナイトが死んだら、どうするの?」 澪の声は、ナイトとは対象的に震えていた。まだ子供の域を出ないのに、異能者だというだけで、悪を断ち切りたいというだけで、向かっていく。それがどうしようもなく恐ろしかった。 「僕が死ぬ?あり得ない。僕は全ての悪を断ち切るまでは、どうなっても死ぬつもりはない」 澪の手を振り払い、ナイトが歩いていく。 「ナイト!」 悲鳴でもあげるように澪が声を張る。 「……」 だが、何度呼ばれても今度は振り向かず、悠然と、それでいて威圧的にナイトは外へと向かった。ブーツの音を響かせて、その瞳に殺意の炎をたぎらせながら――。
/422ページ

最初のコメントを投稿しよう!

423人が本棚に入れています
本棚に追加