壊れた世界、壊された心

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「――悪は、どこまでいっても悪でしかない。更生?あははっ、そんなの面白い言葉でしかないよ。黒に染まったものは、永遠に黒でしかないんだ」 そう言っているのは真っ白の髪の毛をした少年だった。身に纏っているロングコートは小柄な少年には大きすぎるようにも見える。据わった深紅の瞳。病的なまでに白い肌。その顔に表情はなく、淡々としている。 「頼む……頼む、許してくれ……か、金なら返すから……」 そして、その少年が開いた手の平を向けている女が言った。女性といえども肩幅は広く、その体は大きくて筋肉質だ。そんな女性が怯えながら少年へボロボロの札束を差し出すように前へつきだす。少年と女性は距離にして6歩程度の間が空いている。 「金?あぁ――」 少年が思い出したとばかりに女性の握る札束に目を移した。だが、次の瞬間に女の金を握る手がぽとりと落ちた。手首から鋭利な刃物で斬られたように落ち、少しの間が空いてから女が悲鳴を上げながら、手首を押さえてのたうち回る。 「そんなの、いらないさ」 激痛にもだえる女性に近寄り、苦しむ女の髪の毛を掴んで自分の顔を向かせた。細腕なのに、暴れる女性の髪をしっかり掴んで微動だにさせることがない。 「言っただろう?僕は悪が嫌いなだけなんだ。僕が独りで、やっていることなんだ。正義をかざすつもりもなければ、僕は僕自身が最も嫌悪している存在。――悪人から金なんて受け取れないんだよ。虫唾が走って」
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