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「……痛い」
「死んだら、その痛さも分からない。苦しいっていうことも、楽しいってことも、熱も感じないし、考えることも出来ない。それなのに、どうして殺しなんてするの?」
澪はナイトよりも背が高い。彼女の顔を見るには少し首を上にするしかない。見上げながら、ナイトは無表情のまま、また口を開いた。
「死ねば、もう、それ以上悪さはしない。出来ない。澪、反論は受け付ける。でも、僕は自分の考えを曲げるつもりは一切ない」
扉を押し、ナイトが澪を残してシェルターへと入っていった。
「……」
シェルターの中も、薄暗い。だが、それが普通だった。明かりは点々と取り付けられた裸電球。壁は土がむき出しだったり、鉄板で覆われたりしている。大きなファンが回っていて、その風がナイトを迎えた。
「ただいま」
小さく言い、金網の張られた階段を降りていく。下は広いホールで、そこから出入口の扉まではおよそ30メートル程の高さがある。手摺はなく、転落すればケガは免れない。
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