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「どうしたの、おばあちゃん?」
鉄火面のような無表情が崩れ、優しげな瞳をしてナイトが老婆に尋ねる。
「しばらく、見なかったから……心配していたんだよ。……どこか、行ってきたのかい?」
「そうだよ。おばあちゃんに、お土産をあげる」
ロングコートに手を突っ込み、ナイトが老婆に何かを手渡す。
「これは、何だい?」
小さな小瓶。老婆が尋ねると、ナイトがコルクの栓を手で抜いた。すると、柔らかな香りがそこから広がる。ふんわりとした、仄かに甘い香りだ。
「この香りには、気持ちを落ち着かせてくれる効果があるんだよ、おばあちゃん。枕元へ置いておきな」
「ありがとうね、ナイト君……」
老婆が微笑むと、こくりと頷いてからナイトは立ち上がった。また歩き出し、少ししてから老婆を振り返ると小瓶を持ったまま目を閉じて、香りを楽しんでいた。
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