壊れた世界、壊された心

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「――西暦2100年。世界は壊れた。原因は不明。一説には巨大隕石、宇宙人の進攻、核兵器を凌ぐ超強力兵器の暴発……。どれも、信憑性はない。だけど、世界は壊れて、滅んだ。先述のように理由はない。そして、人々には不思議な力が宿った。――異能。全ての人間にはない、不思議な力」 広いロビーのような場所。吹き抜けのそこで、ナイトはシェルターの子供たちの前で話していた。子供たちは膝を抱えるようにして、静かにナイトの話を聞いている。 ロングコートは着用しておらず、タンクトップにロングパンツといった格好だ。だが、物々しいブーツは履いたままで、脇の下にはナイフの収まったホルスターがついている。ロングコートは、今はナイトの腕に二つ折りにされてかかっている。 「いのう……って、どんなの?」 前の方に座っていた女の子がナイトに言った。子供たちの年はまばらだが、ナイトよりも上はいなかった。下は3、4歳から、上は12歳くらいまでだろう。 「特別な力のこと。例えば、僕の異能は切断。ほぼ全てのものを、断ち切れる――」 ナイトが言いながら、質問した女の子の前にしゃがんだ。服の綻びている箇所から出ている糸を指先で触れると、それだけでその糸が切れた。すると、それを見ていた子供たちが歓喜と興奮にざわめく。 「……続きを話そう。世界は滅んだ。地上は荒れ果てている。大地は死に、空は巻き上げられた塵で覆われている。海は汚染され、地上でも生活している生物といえば突然変異した動物――バケモノ程度」 ざわめきはナイトの言葉ですぐに収まってしまう。再び、静寂が訪れてナイトの声だけが響いた。
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