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「人は、生きている。ここと同じようにシェルターの中に避難して。政府関係の人間の暮らすシェルター、日が当たって作物の育つ環境のあるシェルター。色々な特色がある。だが、先ほど述べたような異能を持つ者や、バケモノがそれを放ってはおかない。シェルターを襲撃して食物を奪い、悪戯に人の命を消す。もしかしたら、今すぐにでも、ここへやって来るのかも知れない――」
不安そうに子供たちの表情が曇った。ナイトの顔は無表情だが、それが子供たちには何となく怖さを助長するものに感じてしまう。
「でも……そうしたら先生が守ってくれるでしょ……?」
今度は後ろの方から、声がした。するとナイトはくすりと笑う。
「勿論だ。ただし、僕がそこにいたのならば。異能者やバケモノに対抗出来る武器は、このシェルターにはない。まして、素手でそれを退けられる存在も。異能者は僕だけ。戦えるだけの体力のある人間も、ない」
「じゃあ先生……どこも行かないで」
また声が上がった。すでにナイトの顔は無表情に戻っている。
「そうは、いかないんだ。僕が外に出て行かないと、支給以外の食料や物資の調達が出来ない。今、西のシェルターと交渉をしているところだ。これに成功すれば、少しは食事の量が増える。そうなれば、皆、お腹をすかせなくなる。難しい問題だ。この交渉が終わっても、まだまだ危険はたくさんある。武器を調達しないと襲撃された時に対抗出来ない。食料を自分たちで作らないと、何かあった時に餓死してしまう。そういったことも含め、誰かがやらなければならない。だから、僕がやっている」
ナイトは「先生」だ。シェルターの中で、外のことや、世界の現状を知る存在はナイトだけ。よって、誰に頼まれたでもなく子供たちを集めてこうして話をしていた。
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